嚥下の基礎知識

嚥下のメカニズムから
嚥下食に求められる物性、
とろみやミキサー食の作り方まで、
嚥下の基礎をわかりやすく解説します。

嚥下食の物性評価方法

フォークやスプーンでできる嚥下食の物性評価方法

嚥下障害の方にとって、嚥下食の「かたさ」「付着性(べたつき)」「凝集性(まとまりやすさ)」などの“物性”は、飲み込みやすさに直結する重要な要素です。しかし、どれくらいのかたさが適しているのか、どれくらいべたつきがあると飲み込みにくいのか、物性測定機器がないと適切な物性かどうか判断するのは難しく、仕上がりの物性に不安を感じている方が多いのではないでしょうか?

嚥下食の国際基準であるIDDSI(国際嚥下食標準化構想)では、フォークやスプーンを使って嚥下食の物性を簡単に評価できる方法が示されています。その評価方法とポイントを詳しく見ていきましょう。

準備するもの

・金属製のディナーフォーク
・ティースプーン
・はかり(1kg以上計測可能なもの)

「容易にかめるかたさ」を評価 ~フォーク切りテスト~

  1. フォークの側面で食品を押す。
  2. 食品が簡単に切れれば「容易にかめるかたさ」と判定。
ポイント!

強い力を加えたり、フォークを前後したりせず、側面で押すだけで切れるようなイメージ。

「歯茎でつぶせるかたさ」を評価 ~フォーク押しテスト~

  1. 一口大(15mm×15mm:親指の爪の大きさ)の食品を用意する。
  2. フォークのくぼみに親指を置き、親指の爪が白くなるくらいの強さで食品を押さえる。
  3. 食品が簡単につぶれ、形が元に戻らなければ「歯茎でつぶせるかたさ」と判定。

※成人対象の場合。小児の場合は8mm×8mm。

【該当しない食品の例】

圧をかけてもつぶれず、フォークを離すとかたちが元に戻ってしまう。

「舌でつぶせるかたさ」を評価 ~はかりを用いたフォーク押しテスト~

  1. 15mm角に切った食品を用意する。
  2. 食品をはかりの中心に置き、フォークでゆっくりと上から押しつぶす。
  3. 食品が390g以下で完全につぶれ、フォークを外しても形が元に戻らなければ「舌でつぶせるかたさ」と判定。
ポイント!

食品が完全につぶれるまでの最大値をチェックします。

「付着性」&「凝集性」を評価 ~スプーン傾けテスト~

  1. ティースプーンで食品をすくい、スプーンを横向きにする。
  2. 食品が簡単に滑り落ち、スプーンにほとんど残留がなければ適切な付着性・凝集性と判定。
ポイント!

スプーンに食品の膜が残っていたとしても
膜を通してスプーンが見える程度の薄さであればよい。

【適切でない食品の例】

食品がスプーンから落ちない、またはスプーンを強く振らないと落ちない。
(指と手首だけを使ってやさしく振って落ちる程度であればよい)

嚥下食における「付着性」と「凝集性」の重要性

どんなにやわらかくても、べたつきが強くまとまりのない食品は
嚥下食として適切とはいえません

「ピーナッツバター」を思い浮かべてみてください。
やわらかくはありますが、べたついて口の中などに残りやすく、
飲み込むのに舌の力を要するなど、食べにくさがイメージできると思います。

スプーン傾けテストで、ピーナッツバターが付着性の高さによりスプーンに残留している様子

IDDSI(国際嚥下食標準化構想)について

IDDSI(国際嚥下食標準化構想)は、あらゆる年齢層、介護環境、文化における嚥下障害者に対して使用できるように考案された嚥下食の世界的な基準です。
この基準は、食品の物性や飲料のとろみを表す共通言語として活用できます。

右図のように、段階はレベル0~7に分類されます。
「食品」と「飲料」は別々のトライアングルで構成されており、「食品」はレベル7の常食からレベル3の液状食品、「飲料」はレベル4の濃いとろみの飲料からレベル0の液体と定義されています。

嚥下食の国際基準IDDSIにおけるレベル0〜7の食形態を、液体から常食まで段階的に示したピラミッド型の説明図。

物性評価方法は下表の通りです。
レベル5 からレベル7の“かたさ”については、フォークを使った3つの方法で評価することができます。
レベル7の容易にかめる(食品)では、フォーク切りテストとフォーク押しテストの2つでかたさを評価します。
レベル5では、かたさの評価に加えて、スプーン傾けテストにより“付着性・凝集性”を評価する必要があります。
レベル5が嚥下調整食分類2021のコード3、レベル6がコード4に相当すると考えられます。

嚥下食の国際基準IDDSIレベル5〜7のかたさの基準と、物性評価方法、嚥下調整食分類2021との対応を示した表。

IDDSI の物性定義では、上記のほか「大きさ」「離水」「粘度」などについても定められています。
詳しくはJapan IDDSI Reference Group WEBサイトをご参照ください。https://www.iddsi.org/around-the-world/japan

物性評価方法をマスターして、
適切な物性の嚥下食を提供しましょう!

(参考資料)
中尾 真理ら.「IDDSI フレームワーク 詳細な定義 完成版 2.0 | 2019」
https://www.iddsi.org/images/Publications-Resources/DetailedDefnTestMethods/Japanese/v2detaileddefnjapanese22aug2024.pdf

公式SNSでは
嚥下の最新情報をお届け中!