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“食べられる条件”を本気で探し、スピード感を持って経口摂取へ!
医療と在宅の橋渡しを担う言語聴覚士の取り組み

900年以上の歴史がある春日神社が有名な横浜市港南区。
かつて住宅都市として発展し横浜市のなかでも高齢化が進んでいるこの地域に「よこはま港南台地域包括ケア病院」があります。病院から在宅療養への橋渡しの役割を担い、リハビリテーションに重きを置いています。食事がうまく摂れない患者さんが経口摂取できるよう、リスクを回避しながら“食べられる条件”を本気で探す――。
患者さんと全力で向き合う言語聴覚士に、経口摂取の重要性や患者さんへの具体的な介入方法を伺ってきました。

医療法人裕徳会
よこはま港南台地域包括ケア病院
日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士/
横浜嚥下研究会 世話人

言語聴覚士
粉川こかわ 将治まさはる 先生

お話を伺った方

自宅に戻っても“食べられる”医療を提供
いかに早く栄養を口から入れるかがカギ

地域包括ケア病院である当院では、地域住民の健康福祉の充実を目指し、ご自宅へ戻るための医療を提供しています。特に重点を置いているのが、リハビリテーションです。一般的に、急性期病院の方が医療従事者のマンパワーや設備が整っており、在宅診療に近くなるほど、医療は先細りしていきます。地域包括ケア病院は病院から在宅へと退院していく患者さんの橋渡し役を担っているため、私たちが評価や訓練を適切に行わないと、ご自宅に戻っても何も食べられない状態になってしまうんです。だから、何とか生活につなげられるように、退院後の生活をしっかりと考えなければならないと思っています。

そのため当院では、嚥下機能や歯がない、食べないなど、すべての入院患者さんの「食べる」に関連する評価を言語聴覚士がおこなっており、栄養をいかにスピーディーに口から入れられるかを常に意識しています。そこでフル活用しているのが、ブイ・クレス CP10ゼリー ミックスフルーツ(以下、CP10ゼリー)です。

当初はビタミンB群や葉酸、亜鉛が入っているなど栄養価に注目していましたが、使ってみると物性面でも使いやすいことがわかりました。付着性が低いためスムーズに飲みこめて残留が少ない点が最大の強みだと感じています。付着性が高いゼリーの場合、表面がベタベタしていて動きが悪くへばりついてしまうんです。また、ゼリー表面に適度な水分があるため、動きがとても良いんですよね。誤嚥した時に、食べ物が出しやすいかどうかは、その表面のなめらかさによって左右されます。そういった意味でも、CP10ゼリーは使いやすいです。嚥下調整食でよく言われる凝集性・付着性・流動性・硬さの4つをほぼパーフェクトで満たしたゼリーだと思います。

「とりあえずCP10ゼリーを食べさせよう」が共通認識
気になるコストは摂食機能療法でカバー

嚥下機能を評価して問題なければすぐにCP10ゼリーを使用していますね。医師が求めているのは、口から食べるための解決策とスピード感。CP10ゼリーが食べられれば、状況は変わってきます。

私の臨床経験上、1回の摂食機能訓練で、CP10ゼリーを2個食べられるかどうかが経口摂取に戻れる1つの目安になっています。嚥下障害や高齢者の場合、食べられる量が減ってしまう問題が多いので、ゼリーの量がポイントになりますね。

訪問診療を行う当院の田邊先生から「食べない患者さんがいる」という相談を受けた場合にも、CP10ゼリーが、食べられるか食べられないかが共通の判断基準となっています。

物性面でも栄養面でも優れているCP10ゼリーは、すっかり院内で浸透しています。全病棟の冷蔵庫にはCP10ゼリーが常備されており、看護師も食事が摂れない患者さんがいたら「とりあえずCP10ゼリーを食べさせよう」という認識になっているんです。

唯一徹底していることは、ゼリーの食べさせ方。看護師や介護士には、余分な水分を切って器に移して提供すること、ゼリーを細かくクラッシュさせないよう指導しています。

これだけ使用していると、CP10ゼリーの費用をどうやって捻出するかということも重要となります。

当院では「摂食機能療法」という診療報酬を算定しまかなっています。摂食機能に問題がある患者さんを嚥下造影(VF)や嚥下内視鏡(VE)で評価し、個々の診療計画書に基づいて訓練指導を実施することで算定でき、適用される場合は1日185点が加算されます。当院では、「摂食機能療法」を算定できるようシステム化されています。これにより、毎食1個ずつCP10ゼリーを提供できています。

“食べられる条件”を本気で探す!
モットーは「自分の親だったらどうするか」

誤嚥のリスクがある中で、いかにリスクを回避しながら評価・訓練を行うかを、臨床において大切にしています。食べさせることで誤嚥のリスクがあることも分かっていますが、口に入れないと経口移行が進まないことをたくさん経験しています。

急性期であっても在宅であっても、誤嚥をさせないというのは、基本ではあるのですが、医療従事者の中には「食べさせたら危険だから」という理由で逃げている人が多いのではと感じています。評価を行い食べられる条件を検討した上で、口や舌を動かす訓練を実施するなら良いと思いますが、高齢で残りの時間が限られており、患者さんやご家族は食べさせたい気持ちがある中、「これをやって、患者さんはいつ食べられるようになるの?」と疑問に思うような訓練だけで時間が奪われたら本末転倒だと感じています。

しっかりと嚥下機能を評価して、“食べられる条件”を本気で探すことが重要。患者さんのコンディションをしっかり見ながらであれば、経口摂取を進めることができると考えています。

そんな私の仕事におけるモットーは、「自分の親だったらどうするか」。自分の家族だったら食べさせたいと思うはず。そして根拠があれば食べさせますよね。私だって、いくら親でも勝ち目がなかったら無理に食べさせません。医療はフェアでないといけない。「自分の親に対して行うなら、患者さんにもやろう」と若手スタッフにも常に伝えています。

実際の臨床現場では、医療従事者として、医学的な根拠を患者さんや家族に分かりやすく伝える必要があります。その上で、「食べたい・食べさせたい」という気持ちを理解し、その折り合いをどこに落とすかを考えることが重要です。

今まで日本を支えて下さった方が、今高齢になっているわけですよね。そのため、常に患者さんに対する尊敬や感謝の気持ちを持って接しています。

患者さんに寄り添うことを大切にされている田邊先生と一緒に、患者さんを本当に想ったケアを提供し続けたいと思っています。

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