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世界で唯一のカブトガニ博物館や、日本画家・小野竹喬の美術館など、自然的・文化的施設を有する岡山県笠岡市。そんな笠岡市にある「笠岡中央病院」では、「やってみよう!」というポジティブ思考のスタッフがこだわりの嚥下食を提供しています。持ち前のチャレンジ精神で「量が多くて食べきれない」という嚥下食の課題に向き合い、ボリュームダウンを実現! 患者さんだけでなく、調理者・介助者にもたらされたメリットとその方法についてお話を伺いました。
医療法人 緑十字会
水清会グループ 笠岡中央病院
管理栄養士
当院では15年以上前から、ソフティアシリーズを使った嚥下食を提供しています。見た目の再現度は非常に高く、食材ごとにゼリー状に固め、トッピングを細かく切って盛り付けるなど、委託給食会社の調理師さんがいろいろと工夫をしてくれています。リアルに再現することがモチベーションにつながっているんだと思います。検食簿を交換日記風の書式にしているので「次の盛り付けはこうしてみてよ」なんてお願いすることも。また、地産地消に取り組んだり、朝食の味噌汁に水出しのいりこだしを使ったりと、食材や美味しさにもこだわっています。
食事の満足度をさらに向上させるために、2人の栄養士が分担して常食と嚥下食を1食全て検食しています。嚥下食まで全て検食しているのは、もしかすると当院だけかもしれません。やっぱり一部検食ではなく、1食食べてみないとわからないところがあるんですよね。自分たちが美味しく食べ切れるか? 検食が楽しみか? という視点でアイデアを出し合って、日々改良を重ねています。
そんな当院の味も見た目も美味しい嚥下食の唯一ともいえる課題が「量が多くて食べきれないこと」。
エネルギー1,200kcal、たんぱく質50gに設定し嚥下食を提供していましたが、実際は全量食べきれず、お粥やおかずを半量にして栄養補助食品をつけていたため、品数が増えてしまっていました。また病棟では、食事介助に時間がかかることが問題となっており、看護師から「量を減らせないか」「品数を減らせないか」との声が挙がっていました。
そんな課題を抱えていたとき、「あれが使えるじゃないか!」と、度々紹介してもらっていたニュートリーコンク2.5を思い出したんです。すぐにサンプルを取り寄せて唐揚げで試作をしたところ、味がとても良く、仕上がり量が目に見えて減ったので、「これはいい!」と思いました。味噌汁にも入れられると聞いて、試してみたらこれも美味しくて。
実際に嚥下食を作る調理師も「工程が増えるわけじゃないから、作りやすかったよ」と言ってくれて作業面も問題はありませんでした。
もともと嚥下食の献立表にだし汁やゲル化材の量を表記しており、“献立を見れば誰でも作れる”状態にしていました。そのため、ニュートリーコンク2.5の分量を追記するだけでスムーズに導入できました。
現在、ニュートリーコンク2.5を毎日毎食活用しています。朝はお味噌汁に20gを加える、昼夕はたんぱく源となる主菜に加える、などタイミングや料理、量などを決めて運用しています。主菜に加える場合は、ミキサーにかけるときに使うだし汁の半量をニュートリーコンク2.5に置き換えるだけ。
肉・魚の他、きつねうどんの油揚げ、かに玉の卵や麻婆豆腐の豆腐など、幅広い食材に合いますね。自分たちが検食をしているので、「味が気になったら随時調整していこう」という形で始めましたが、どれを食べても美味しいです。
ニュートリーコンク2.5の導入によって、量が多く食べきれないという課題が解決でき、さらに、当初想定していなかったさまざまなメリットがありました。
ニュートリーコンク2.5
〈 導入前 〉
ニュートリーコンク2.5
〈 導入後 〉
ニュートリーコンク2.5導入前は、1切70gの魚に対し50%のだし汁を加えて嚥下食を作っていたので、常食では70gの魚が、嚥下食では約105gと大皿いっぱいになっていました。ニュートリーコンク2.5を加えたことで嚥下食の栄養価が上がったため、提供量を約60gまで減らすことができ、常食同様見た目がコンパクトになりました。
また、試作と並行して、嚥下食の提供栄養量も見直しました。対象者は高齢で小柄な方が多かったため、エネルギー1,000kcal、たんぱく質33gに変更。 それに伴い、もともと210g提供していたお粥に粉飴を加え100gに減らしました。検食する私たちですら食べきることが難しかったのですが、患者さんもペロッと食べられるようになりました。
改めて計算してみると、小鉢を1品減らしても栄養量を充足することがわかり、品数を減らすことも可能に。最終的に、お粥と主菜、既製品のデザート1品に、粥のお供として梅びしおや海苔の佃煮を毎食つけることになりました。献立上のメニューを全量召し上がれる方が増え、全量食べてもエネルギーが足りない方や、積極的に栄養を付加したい方以外には栄養補助食品は不要となりました。
適正な栄養量を効率良く確保できるようになり、たくさん食べられない方の負担を軽減できたことは、最大のメリットでした。
ニュートリーコンク2.5を入れても嚥下食の調理工程はほとんど変わりませんが、小鉢が減ったことで、調理の手間軽減に繋がりました。食材別に固めて、きれいに切って盛り付けてという作業が1品分なくなったので。また、食事量を半量にして不足する栄養価をブリックタイプの栄養補助食品で補っていたため、容器から出して切り分ける作業もなくなりました。特に朝食時は大変だったみたいで、調理スタッフから助かるとの声があがっています。
少人数で食事介助を回せるようになった病棟スタッフからも「導入による変化はありがたかった」と喜ばれています。
ニュートリーコンク2.5の費用はかかりますが、食材の量を必要最小限に抑えることができたため、導入前1日平均585円だった食材料費が、現在554円と、単純比較で約31円のコスト削減になりました。最近、さまざまな食材が値上がりしていることを考えると実際の効果は数字以上と感じています。それに加えて、毎食付けていた栄養補助食品の費用が削減できました。
これらのコスト削減によって、委託給食会社の食材料費の範囲内で、粉飴やお粥に添える梅びしおなども導入でき、患者さんに還元できました。トータルコストが上がらなかったので、委託給食会社との交渉はスムーズに進みました。
ニュートリーコンク2.5はだし汁の半量を置き換えるだけで手軽に栄養価をUPできるので、嚥下食を手作りされている病院や施設であれば、導入しやすいと思います。 嚥下食に入れるのは難しい、もっと簡単な方法はないの? という場合は、味噌汁に入れるのがおすすめですね。
当院の系列の老人保健施設でクラスターが発生し、食事介助するスタッフが不足するという事態に陥ったときに、ニュートリーコンク2.5を味噌汁に入れ、1品減らして乗り切ったことがあります。とても簡単なので試してみてください。