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大阪市のベッドタウンである大阪府茨木市。沢良宜城跡近くにある「くれはクリニック」では、外来診療のほか自宅を訪問して診療する訪問診療を積極的に行っています。在宅医療にも医師・管理栄養士・言語聴覚士などによるNST(栄養サポートチーム)を導入し“食支援”に注力されています。
食支援の取り組みのひとつとして、言語聴覚士がおこなっているのが“患者さんと一緒に嚥下食を作ること”。なぜ食べるだけではなく、自分で作ってもらうのか?についてお話を聞いてきました。
医療法人社団日翔会
くれはクリニック
言語聴覚士
「くれはクリニック」の在宅NSTチームの言語聴覚士として、在宅の患者さんの摂食嚥下リハビリテーションに取り組んでいます。病院とは違い在宅では、飲み込みの機能を改善させるというより、機能を維持することがリハビリの目的となることが多いです。そのため、在宅でのリハビリは、患者さんやご家族の希望に応えたり、ご希望を訓練の目標とすることが多く、「頑張って訓練をする」というよりは「訓練の一環として楽しいことをやる」、「たくさん食べてもらう」というよりは「一口でもいいから楽しんでもらう」ことを常に考えています。
普段から、ぬいぐるみなどを使って楽しい雰囲気を作ったり、身近な市販品で食べやすそうなものを提案したり、患者さんと一緒に嚥下食を作るなどさまざまなことを実践しています。中でも、患者さんはもちろんご家族からの反応も良いのが、“嚥下食を一緒につくること”。最近はよく「そく粥つるり」を活用しています。お湯に混ぜるだけで簡単に作れて、洗い物も少ないからとても使いやすいです。なめらかなお粥としても楽しめますが、おもち風にもできるというところが、画期的だなと思います。お年寄りには特に喜ばれますね。
普段は口からお食事をとっていない小児の利用者さんにも、ご家族の要望で訪問リハの時に口から食べる楽しみの時間を設けています。最初は食べるだけだったのですが、知育菓子を一緒に混ぜたり、そく粥つるりでみたらし団子を作ったり、参加型で調理をしています。できたものを食べるだけじゃなくて、お子さんもお母さんも私もみんなで一緒に作ると、失敗したり落としたりっていうのも楽しいし、上手くいったらうれしいし、すごく良いなって思いますね。ご家族は、お子さんにいろいろな経験をさせてあげたいとおっしゃっているので、本人が楽しそうなのはもちろん、お母さんの笑顔もとても印象的でした。
施設に訪問することもあるのですが、施設でもリハビリの一環として調理レクリエーションを取り入れています。利用者さんご自身に、ラップを使ってそく粥つるりで作ったお団子を丸めてもらいました。「そんなにぎょうさん入れるの?」「こうやって丸めるんやで」 とおしゃべりに花が咲いたり、物静かな方は黙々とやっていたり、それぞれ性格が出て面白いですよ!仕上げにみたらしをかけたり、あんことソフトクリームをトッピングしてみたりっていうのも楽しいですよね。表情が全然違うみたいです!
終わったあとに、スタッフの方が「あの利用者さんは、自分で作ったおやつやから食べにきたんや。」っておっしゃっていて、自分で作ることが“食べる楽しみ”につながったんだなと実感しました。
それから、全員が同じものを食べられるっていうのもすごく良くて、他の人はおまんじゅうを食べているのに、何で自分だけゼリーなの?って言われるというのもよく耳にしますし、ご家庭の場合でも「今日は皆さんと同じですよ」とお伝えすると、とても喜ばれます。みんなで同じメニューを楽しめることを喜ぶご家族も多いですね。
これから春に向かって、そく粥つるりで桜もちにチャレンジしたり、お寿司も提案したいなーと思っています。
私たちが、誕生日にケーキを食べるように、ハレの日や行事など、普段の生活に「楽しさ」をプラスするお手伝いをしていきたいと思っています。