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地域包括ケアシステムで求められる横の連携

ライター:塩野崎 淳子

多職種連携と同じくらい、同職種連携も大切です

仙台市で在宅訪問管理栄養士としての一歩を踏み出したのは5年前の夏のことです。その頃、「他職種連携」や、「多職種連携」に興味があり、それらをテーマにした勉強会やセミナーによく足を運んでいました。

病院に勤務していた頃は、日頃からほかの職種と協働して患者のケアにあたっていました。例えば、昼食時に院内の食堂へ出向き、姿勢が崩れたまま給食を食べている患者を見つけると、セラピストを呼んでポジショニングについて相談するといった具合です。

地域に出てみると、別々の事業所に勤務する専門職が気軽にディスカッションする機会を持つことの難しさを知りました。もちろん、サービス担当者会議にも参加はしていますが、ケアプランやサービスについて限られた時間の中で話し合うことが主な目的ですので、「栄養ケア」についてだけ議論するわけにはいきません。しかし、もしその患者にとって重要なニーズのひとつが「栄養ケア」や「食生活のサポート」であった場合は、食生活の営みに関わる職種とじっくり話し合うことも必要です。

ある患者のサービス担当者会議に参加した際、ショートステイ先である特別養護老人ホームで給食を提供している管理栄養士も参加していました。管理栄養士同士が話をすると、「栄養の連携」がとてもスムーズです。もし会議に施設の相談員のみが参加していたとしても、「現在、〇〇さんの食事に含まれるたんぱく質の量は何グラムですか?」と聞いても、「すみません。私は分かりませんので調べてきます」という返答になる場合がほとんどです。個々の患者の給食を管理しているのは管理栄養士なので、施設での提供栄養量の確認や在宅での栄養ケアとのすり合わせは、同職種で話した方が「話が早い」のです。

ショートステイ先やデイサービスへの見学も

サービス担当者会議で管理栄養士同士の「横の連携」が持てることは、かなり稀なパターンです。ショートステイ先やデイサービスには管理栄養士が採用されていない場合もありますので、患者が自宅以外で食事をする際に「どんな栄養量の食事を」(献立の内容)、「どれだけ」(量)、「どのように食べているのか」(食べているときの患者の様子)を確認したい場合は、患者がサービスを利用している日の昼食時間に直接、その事業所まで訪問することもあります。

訪問してみると、自宅で食事をするときとは違う、「患者の別の顔」を垣間見ることができます。パジャマではなく「お出掛け着」をまとい、背筋もピンと伸びています。自宅では「嫌いだ」と言って残す肉類を完食していたりして、驚かされることもしばしば。自宅の食事と施設の食事(給食)の違いを自分の目で見て確認し、「自宅では食べないけれど、施設では食べるのはなぜか?」と施設スタッフと意見交換をします。すると意外な問題点が浮かび上がってくることもあるのです。

逆のパターンもあります。施設での生活リズムが患者に合わず、食事の時間になっても食欲が無い場合には、補食の持参について家族を含めて話し合うこともあります。

病院と地域のシームレスな連携のために

先日、90代の女性患者への訪問栄養指導の依頼がありました。その女性はここ数年で入退院を繰り返すようになり、心臓と腎臓の機能が低下してきていました。これまでに入院した病院の退院時サマリーの中に「栄養サマリー」があったので、在宅栄養ケアのヒントになるかもしれないと思い、担当ケアマネジャーに見せてもらいました。

すると、病院で提供していた食事が「さわやか食」という聞きなれない名称だったことが分かりました。「さわやかって、何がさわやかなのだろう」と不思議に思い、ケアマネジャーに聞いてみると……。

塩野崎「この、さわやか食っていうのは、どんな特徴の食事なのでしょうか」

ケアマネジャー「さあ……、スッキリして胃もたれしにくい食事のことではないでしょうか」

塩野崎「この方の病態からすると、それほど胃もたれにはこだわらなくてもよさそうですが」

ケアマネジャー「えっ、そうなんですか!? でも具体的にどんな食事内容だったのかは、私も見当がつきません」

以前、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の学術集会に参加した際、ある講演の中で「病院や施設で提供される給食の『おかずの名称』の種類を調べたところ、約90種類あった」と聞いたことがあります。「ソフト食」ひとつとっても、「やわらか食」「とろける食」「つぶし食」などなど、施設ごとに名称が違うため、それがどんな食事なのかの「通訳」が必要になってしまうのです。

院内で呼びなれた名称が使われるのは結構ですが、せっかく栄養のサマリーを作成するのであれば、誰が読んでも分かるように作成してほしいと思います。それで例え読む人が栄養学の知識をもっていなかったとしても、入院中の栄養管理がどのような経過をたどったのかを知り、退院後の食生活はどのようなことに注意をすればいいのかを分かりやすく助言することで、患者が「再入院の常連」になるのを防ぐことができるのではないでしょうか。

また、栄養管理が難しい患者の場合には、病院と地域の「管理栄養士の横の連携」を密に行うことで、よりスムーズに在宅での介護生活を始められるのではないかと思います。

著者プロフィール:塩野崎 淳子

在宅訪問管理栄養士 介護支援専門員

長期療養型病院の栄養管理、訪問看護ステーションのケアマネジャーを経て仙台市内の在宅療養支援診療所所属の管理栄養士として、地域の在宅療養者の栄養ケアに取り組んでいる。

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