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風邪でも病院に行かない? 世界的に高く評価されるイタリアの医療制度

ライター:鈴木 圭

イタリアの医療制度は世界第2位、効率性や公平性が高く評価

2016年に世界保健機構(WHO)が発表した保健医療制度を評価したレポートによると、イタリアの医療制度はフランスに次ぐ世界第2位とされており、非常に高い水準にあることが報告されています。これは、世界各国の医療制度を「国民の健康」「保健医療システムの平等性」「責任レベル」「保健医療サービスの提供」「公平な資金供給」などの指標に基づいてスコアをつけ、ランキングしたもの。国の健康を支える医療制度が効率的かつ公平に機能しているか、その健全性を評価したものと考えると分かりやすいかもしれません。
参考までに、3位以下はサンマリノ、アンドラ、マルタ、シンガポール、スペインと続き、上位はほぼ先進国が独占。日本は10位にランクインしています。

また、WHOが発表した別のレポートによると、2015年におけるイタリアの平均寿命は82.7歳で世界第6位となっており、こちらも非常に高い水準にあることが分かっています。イタリア人は安全な食にこだわるなど、もともと健康に関して非常に高い意識を持つ傾向にありますが、この結果は同国の医療制度の秀逸さを裏付けるものともいえそうです。

イタリアの医療はホームドクターから

世界的に見ても非常に高く評価されているイタリアの医療制度。実際にはどのようなシステムで運用されているのか、具体的に見てみましょう(イタリアの医療制度は公営と私営の混合で運営されています。このうち、一般的に医療制度というと国が運営する公営の制度を指すことが多いため、この記事でもそちらを中心に説明しています)。

風邪をひくなど体の不調を感じたら、イタリアでは病院に行かずに、まずは居住地の近くにあるホームドクターの診療所を訪れます。そこでまずは基礎的な診察を受け、薬が必要な場合は処方箋を書いてもらい、また、詳しい検査や専門的な治療が必要と判断された場合は専門の病院を紹介してもらうというのが基本的な流れになります。

まずはホームドクターが医療の入口になっており、専門的な治療を要するのか、薬を飲んで自宅で安静にするのがいいのかを判断するのです。ホームドクターは保険証を作る際にリストの中から選ぶシステムになっており、もし自分に合わないと感じた場合は後で変更することも可能です。

医療サービスを受ける側にとって嬉しいのは、このホームドクターの診療は100%税金でまかなわれており、患者は無料でサービスを受けられるという点です(薬の購入や専門病院での診療は別途費用が発生します)。

専門的な検査や手術の必要がなく、薬で対応できる場合は基本的に病院に行くことはなく、ホームドクターの診療だけで済んでしまいます。そのため、よほど重篤な症状でない限り診察は無料で受けられることになるのです。

また、大きな怪我や急に体調が悪化したなどの緊急時は、地域の病院にあるプロント・ソッコールソ(Pronto Soccorso:救急病院)を訪れます。こちらは24時間常に開かれており、すぐに専門医による診療を受けることができます。あくまで救急病院のため風邪をひいた程度では診てもらうことはできませんが、緊急性があると判断された場合は全て無料で診療を受けることができるのは注目すべきポイントといえるでしょう。

ヨーロッパに関していえば医療費が無料になるケースは多く、多くの国で似通った制度が運用されています。ただ、例えばイギリスの場合は薬の購入費以外に処方箋に対して支払いが発生するケースがあったり、必ずしも自分の判断だけで緊急病院に行くことができない(専用ダイヤルに電話をして医療アドバイスを受ける必要がある)など、同じヨーロッパ内でも制度は少しずつ異なります。

こうしてヨーロッパの国々を見渡してみると、費用の心配なく医療が受けられる点や、緊急時の対応力などイタリアの医療制度が優れていると感じる点は多く、そこがWHOの高い評価につながっているのかもしれません。

制度の根幹にあるのは「万人救済」という思想

イタリアの医療制度の根幹にあるのは「万人救済(Sistema Universalistico)」という考え方です。たとえ不法滞在者や犯罪者であっても、万人が分け隔てなく無償で医療を享受する権利を有するとしています。このあたりは、さすが寛容なカトリックの国といったところでしょうか。

通常どの国でもそうですが、無料もしくは一部負担で医療を受けるためには、その国の健康保険に加入している必要があります。しかしイタリアの場合、緊急時であれば正規のビザ(滞在許可証)を持たない外国人観光客であっても、無料で医療を受けることができるのは驚くべき点といえます。

失業率が高く相変わらず経済状態が安定しないイタリアですが、それでも多くの人が安心して暮らすことができるのは、基礎的な診療が無料で受けられることと決して無関係ではないでしょう。医療制度はその国の事情や財源などによっても変わるため、どうあるべきかを一概に語ることはできません。ただ、イタリアの医療制度を見ていると、これが1つの理想形なのかもしれないと感じるのもまた事実です。

 

著者プロフィール:鈴木 圭

イタリア・ミラノ在住、フリーライター。広告ディレクターや海外情報誌の編集者などを経て、2012年にイタリアに移住。イタリア関連情報や海外旅行、ライフスタイルなどの分野を中心に活動しています。

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