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2018年診療報酬改定の意味づけ、徹底解説!

ライター:吉田 智美

2018年診療報酬改定で何が起こる

今回の診療報酬改定は医療機関にとって覚悟が必要です。その覚悟とは、「地域の中での自分たちの施設の役割を考え、それに従って行動することができるか」ということです。今回の診療報酬改定は、従来から言われていたように「地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進」が進められるようになっています。この流れは既に止めることはできず、どこに自分たちの施設をポジショニングするのかを決めていかなければならなくなります。

特に急性期病院は、「本当にこのまま7:1看護病床を続けていくのか」というところが大きなポイントとなるでしょう。地域包括ケアシステムがシステムとして機能するように、さまざまな連携に関する評価がつけられるようになっていきます。地域包括ケア病棟は地域からの受け入れ評価が高くなります。これまでは退院支援だけの評価だったものが、入院前から退院に向けての評価がつくようになります。

スムーズな連携やそこで行われるケアにおいて多職種連携の輪は広がっており、社会福祉士、歯科、薬剤師、介護職員といった職種との連携も算定要件に入っているものが増えています。

地域での医療の充実のために訪問診療や訪問介護などの報酬面を厚くするために、地域包括診療料を取りやすくし、かかりつけ医の機能を開業医が担いやすくするようにもなっています。非常に厚生労働省の意図が分かりやすい印象を受けます。

ほかにも、現在の医療を支えるだけではなく医薬品、医療機器、検査などにおけるイノベーションや、ICT(情報通信技術)などの将来の医療を担う新たな技術を含む先進的な医療技術の導入・評価などを改定項目に挙げており、まだ限定はされているもののオンライン診療、オンライン医学管理料、遠隔モニタリングやカンファレンスのオンラインが新設されていることからも、医療や介護の現場の働き方も徐々に変わってくると思われます。

これらの項目から予測されるのは、良い面も悪い面も含めた地域差の拡大です。これまで多くの議論を重ねてきている内容を反映しているので、こうした改定項目はある意味で順当です。予測の範疇とも言えるため、徐々に準備が進んでいる地域とそうでない地域との差が今回の改定で明確になってくるはずです。地域特性は非常に重要なことで、全国一律の診療報酬、介護報酬という枠組みだけでは解決できない問題におのずと直面することになるでしょう。

2025年に向けての2018年

そこで考えるべきは、どこに目標を定めた「今」(2018年)なのかを理解することです。

2025年は団塊の世代が後期高齢者(75歳)になる年です。出生率がこのまま上がらなければ高齢化はさらに進みます。人口減少もさらに地域ごとの差が開き、必要となる病床予測と実際の数字と現状と合わなくなってくることは医療・介護関係の方ならよくご存じだと思います[1]。その2025年まであと7年です。現場が突然変化することはないでしょうし、診療報酬が改定されるたびに診療報酬での評価が高いものに対応していくのはあまりにも非現実的です。

2018年は2年に1度行われる診療報酬改定と3年に一度改定される介護報酬が同時改定というだけではなく、第7次医療計画と第7次介護保険事業計画がスタートする年でもあります。つまり2017年までに都道府県ごとに策定された地域医療構想を実践していく最初の年です。また2025年に向けて関係法律なども整備されています。そのほか、医療・介護の総合確保方針と医療保険制度の一体改革も節目の年を迎えます。こうして迎えた2018年なのです。

さらに、今回改定された診療報酬が人件費や設備費などに十分な投資ができるような改定率ではなかったことも、現場が変化を躊躇する要因になっています。全体の改定率はマイナス1.19%、そのうち診療報酬改定率は0.55%、薬価等でマイナス1.74%。つまり人件費や設備費等のもととなる本体部分はほぼ変わらず、薬価を下げることで医療費を抑制するような改定になっているのです。よって本体がわずかにプラスであったとしても何かを削らなければ新たなことはできないことになり、赤字の医療機関にとってはこれまで以上に経営努力が必要となります。単純に高い診療報酬点数を狙っていくだけでは、なかなか施設や看護の基準をクリアできないため、むやみに地域における自分たちの施設のポジショニングは変えられません。

地域包括ケアシステムの推進においては、2025年までに各施設が「地域のニーズに合った“あるべき医療・介護の提供体制”」を実現することが強く求められています。そもそも原資がないのですから、地域での共通資源をシェアすることや連携・協力体制なしには無駄を省くことはできません。今回の診療報酬改定は、地域の中での役割意識がない施設が淘汰されていくことを意味します。

現場は何を目指せばいいのか

最も大事なのは、2018年の診療報酬改定の意味を知ることです。地域ごとに状況が異なるのに、診療報酬という全国一律の報酬の中ではうまくいくはずがありません。もちろん取りこぼしをしていいと言っているわけではありません。診療報酬をとることばかりに気を取られると基準を満たすことばかりに躍起になってしまい、発想が限定されます。そして言葉を選ばすに言えば、診療報酬を得るために結果的に過剰な医療を提供する恐れもあります。

例えば「算定は月2回までとする」とあると、報酬のことを考えれば現場はその上限まで医療行為を行おうとします。ところがその時「患者にとって最善の医療」になっているとは限らず、さらにそのことによって患者1人に割く医療スタッフというリソースがほかに必要としている患者に回せていないかもしれないという視点が抜けてしまい、そこで現場への余計な負担を強いてしまっている可能性もあると思います。経営の基本は保険診療の中であったとしても変わりません。サービス論的に言うと、現場が疲弊するとサービスの質は低下します。[2] 患者の価値を中心に置き、自分たちの提供しているサービスを見直す全体最適化の作業をしていかなくてはなりません。

医療・介護職も、本質は「患者・利用者に対して良いことをしたい」という価値観を持っています。ところがそうした価値観から、診療報酬を得ることに気を取られると医療介護職にジレンマを生じさせてしまいます。

そうならないためには、事業ごとの単体で考えないこと重要となります。ここは経営者とスタッフが一緒になって考えていくべきところで、スタッフは経営視点をもち、経営者は現場が持っているジレンマを共有するところから議論を始めてみるのがよいでしょう。

次に大切なのは、フラットな話し合い文化の醸成です。業務を効率的に遂行していくには役割分担をしなくてはなりません。と言っても、自分のことだけをしてそれ以外を丸投げするという意味ではなく、個々のもつ専門性や特性を尊重し、よく話し合って業務を進めていくということです。一言でいうと「チーム医療」なのですが、概念的には病院内だけの多職種連携ではなく、地域へとその輪を広げる必要があります。

そして地域まで広がった連携は単なる“顔の見える関係”を超え、市民の医療や介護を支えるための協働関係となります。その時に必要なのが職種ごとに異なる多様な価値観を認め合い、尊重し合いながら話し合う文化づくりなのです。

診療報酬改定はあくまできっかけであり、この機会をどのように捉えるかが重要です。そして純粋に目の前の自分たちの地域をいかに良くしていくかを考えていくことこそ、現場の務めだと考えます。

 

[1] 社会保障審議会介護保険部会(第50回)平成25年10月2日資料http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000024924.pdf

[2] ジェームス・L・ヘスケット他「バリュー・プロフィット・チェーン 顧客・従業員満足を「利益」と連鎖させる」 2004

 

 

著者プロフィール:Health Communication Facilitator ®   吉田智美

愛知県名古屋市生まれ。中京大学体育学部健康教育学科卒、立教大学ビジネスデザイン研究科でMBAを取得。医療業界での営業、教育の仕事を経て、現在はフリーで活動。医療・健康に関連するあらゆるコミュニケーションの場における理解の促進や問題解決を助けることを仕事としている。ステークホルダー全員で共に考えていく仕組みや場づくりに情熱を注ぎ、中でも合意形成に興味があり、「ゆるやかな合意」について研究している。

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