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最期まで地域で暮らすための栄養サポートとは

在宅医療の住まいは「自宅」だけではありません

今年の夏で在宅訪問管理栄養士として活動を始めて丸5年になります。手探りで始めた訪問栄養指導ですが、患者さんによってその療養環境は十人十色。いまだに手探り状態は続いています。「在宅介護」というと、偏った報道の影響もあり一般の人にはなんとなく暗いイメージがありますが、障害や病気があってもいきいきと暮らしている患者さんやそのご家族を見ると、こちらも明るい気持ちになります。

訪問の仕事をする前は、「在宅医療」というのは「自宅で療養すること」だと思っていましたが、在宅医療は「自宅」だけではありません。住み慣れた居住型施設やグループホームなど、住む場所が自宅ではなかったとしても、その方にとって居心地の良い「住まい」であれば、私はどこで最期を迎えても良いと考えています。ですから、今回のテーマも「最期まで自宅で暮らす」ではなく「最期まで地域で暮らす」という言葉を選んでいます。住み慣れた地域で最期を迎えるための栄養サポートとはどんなものなのか。読者の皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

できれば誰のお世話にもなりたくない高齢者

年に数回、地域の介護予防教室で「健康に長生きするための食事」について講話を依頼されます。そうすると、誰もが口をそろえてこう話します。「要介護状態にならないようにしたい」「ピンピンコロリしたい」「認知症にならない食べ物を知りたい」と。しかし、「ピンピンコロリ」はいわば「急死」で、実は死亡者全体の5%ほどにすぎないと言われています。つまり100人中95人は、何かしら介護や誰かの手助けが必要な状態で最期を迎えるのです。65歳以上の高齢者の4人に1人が認知症になると言われていますし、認知症にもならず、「ピンピンコロリ」する確率はとても低いのです。そんな「あまり知りたくない事実」を伝えると、「ええ~!」とがっかりした声が上がります。 

最期まで住み慣れた地域で暮らすには、誰かの助けやサポートが必要となる日が来ると思っていた方がよいでしょう。そんなとき、どんな病気や障害があったとしても、「夜はぐっすり眠れて、しっかり食べ、しっかり出す」という生活の基本ができていれば、要介護状態であったとしても穏やかな生活を送ることが可能です。

ところが、「しっかり食べられない」ことが原因で栄養状態が低下し、免疫力が低下して衰弱し、褥瘡や誤嚥性肺炎を発症するなどして急激にQOLが低下する高齢者がいます。また、末期のがんなどで食欲が低下し、大好きだった食べ物も受けつけなくなり、最期のひとさじが「まずい栄養剤だった」というケースもあります。もし私がそんな状況になってしまったらと考えるとぞっとします。皆さんなら、最期に何を食べたいでしょうか。

どこで住んでいても、「最期のひとさじ」をもっと大切に

現在、国は地域包括ケアシステムの構築を進めていますが、イメージ図として植木鉢の絵が厚生労働省のホームページに掲載されています。(図1)

地域包括ケアシステム

厚生労働省 地域包括ケアシステム

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/

 

植木鉢には「すまいとすまい方」とあります。住まいという「土台」の上に医療や介護のサービスや生活支援があります。私がこの図を見ていつも疑問に感じているのは、どんな「住まい」でも、最期まで穏やかに暮らすための「食の支援」が十分に受けられる環境にあるのだろうか? ということです。もとの料理が分からないほど粉々に刻まれた食事で毎回むせこみながら食事をしている方や、3食とも「口に合わないお弁当」を提供され、食欲不振に苦しむ方を見ていると、生活の根本となる食のサポートが手薄であると思わざるを得ません。

「最期のひとさじ」を美味しく味わうことができるような環境は、一朝一夕では作れません。私が在宅訪問栄養指導を行ったあるグループホームでは、介護福祉士が入居者の食事を作っています。そのフロアに暮らしている9名の要介護者のうち、5名がミキサー食を食べていました。今では、ゲル化剤を上手に活用し、グループホームのスタッフがどんな嚥下食でもおいしく作ることが可能になりまた(写真1)。

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(写真1) 介護福祉士さんが調理した嚥下食
(ゼリー状に再形成した「おでん」)

このグループホームでは、在宅医と連携して看取りも行っています。私も高齢になったら入所したいと思えるほどの温かい介護を受けることができ、食事も味がおいしいのはもちろん、見た目にも食欲をそそる料理を味わえます。そんな、最期まで安心して暮らせる「すまい」がもっと増えてほしいと願っています。

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