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今後の入退院支援をどうしていくか

ライター: 吉田 智美

病院機能の分化と「入退院支援」

現在、多くの病院では7:1の看護基準の病床が多く、慢性期病床が少ないことは既にご存知のことだと思います。急性期病院は手術や高度な医療機器が必要な疾患の患者さんのために病床が使われる必要があり、そこまで高度な医療が必要ではなくなった患者さんについては診療報酬点数上、また高度な医療資源を効果的に分配するためにも速やかに次の病院または施設や在宅へ移って欲しいと考えます。

しかし現実は患者さんの状態もありますが、病態が安定していても行っている医療によっては患者さんの病態を受け入れてくれる施設が無かったり、あっても家族が通うことが難しかったり、またお金の面で難しかったりとさまざまなことがあります。そのため従来は、入院の早い段階からの「退院支援」に対して高めの診療報酬がついていました。

 2018年の診療報酬改定においては、「患者さんの状態に応じて質の高い医療が適切に受けられるとともに、必要に応じて介護サービスと連携・協働する等、切れ目ない医療・介護供給体制が確保されること」が医療機関に求められています。

また患者さんの状態に応じた入退院支援や医療連携を推進する観点から、「退院支援加算」について「入退院支援加算」と改称することが決まりました。これは病院の機能分化と連携を強化するためです。特に入院予定の患者さんに対する入院前からの支援・早期の退院を促すために、入院早期からの福祉等の関係機関との連携が評価されることになります。情報提供についての診療報酬もつくため、どの施設も「入退院支援」に力を入れることになるでしょう。 

「入退院支援」を担う部署は単なるハブではいけない

患者さんからすればそのまま同じ施設で療養したいのに、「この病院では療養できない」と言われたら、今後どうすればいいかと感じてしまうのは不思議ではありません。

しかしだからと言って長く入院するというのも難しい状況です。そこで色々と頑張っているのが、病院では「地域連携室」の方々です。「地域連携室」の役割はとても重要です。現状、多くの病院ではスタッフやノウハウが不足しているためハブ(情報集約)としての仕事すら十分でないところも多くみられますが、「地域連携室」は患者にとってのコンシェルジュ(案内役)であるべきだと考えます。

 「地域連携室」は、診療報酬の点数のことしか考えないようなところでは「次の施設の斡旋所」としか考えられないかもしれません。しかし患者さんが退院した後の療養のことまで真剣にサポートをするとなると、患者さん本人はもちろん、そのご家族を含めた生活のことを考えた情報提供やアドバイスをする必要があります。

そのためには入院中は患者さんの病態を把握しつつ、今後の療養生活を支援するためには病棟スタッフだけではなく、院内外の様々な職種との連携をしなくてはなりません。地域の医療機関や行政からの情報収集や、それらとの関係構築も仕事になります。

「地域連携室」に期待されるソーシャルワーク機能

「地域連携室」は患者さんにしてみればコンシェルジュカウンターですが、当然、その仕事はホテル等のコンシェルジュとは異なります。ホテルコンシェルジュは旅の期間中の案内役ですが、病院では今後の生活の案内役です。

病院は命や一生に関わる場所です。これは決して大げさな話ではなく、病気によってそれまでの生活が変わってしまったということはよくあります。入院しても短期で退院できたり、入院が長期にわたっても完治するような病気であればその後の影響は少ないのですが、退院後に仕事の制限を受けたり、高齢者の場合だと介護が必要なのに家では対応できないとなると、入院前と入院後ではガラッと生活が変わってしまいます。

それまでギリギリで生活していたり、独居で身の回りのことを手伝ってくれる人がいなかったりと、世の中には表には見えにくくてもさまざまな問題を抱えている人がたくさんいます。そうでなくても人々の生活は個別性が高く、一律・一様ではありません。そこで注目されているのが、「地域連携室」のソーシャルワーク機能です。

日本学術会議の社会福祉・社会保障研究連絡委員会がまとめた報告書によると、「ソーシャルワークとは社会福祉援助のことであり、人々が生活していく上での問題を解決なり緩和することで、質の高い生活(QOL)を支援し、個人のウェルビーイングの状態を高めることを目指していくことである。」(「ソーシャルワークが展開できる社会システムづくりの提案」平成15年6月24日)とされています。[1]

 地域包括ケアシステムを構築していくには、単に医療・介護だけでは解決できない問題は沢山あります。そこの視点があるのはソーシャルワークを担っている人です。病院によっても違いますが、「地域連携室」には以前から医療ソーシャルワーカーがいます。しかしまだその人数は少なく、十分に活躍できていないところも多いのです。

連携の推進とは地域全体でチームプレイをするようなもので、活躍が期待されていても多職種にわたる人たちが連携していくのは本当に骨が折れるもの。最近は、在宅医療に対応しているクリニックも社会福祉士や医療ソーシャルワーカーを雇用するようになってきており、今まであまり表に出ていなかった分、医療ソーシャルワーカーに大きな期待が寄せられているようです。[2][3]

 

[1] 国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)と国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)によると、「社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす。ソーシャルワークの理論、社会科学、人文学、および地域・民族固有の知を基盤として、ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に働きかける。この定義は、各国および世界の各地域で展開してもよい。」とあります。

 [2] 「ソーシャルワークに関する期待について」第9回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会 平成29年2月7日

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000150799.pdf

[3]「地域共生社会の実現に求められるソーシャルワーク ~ソーシャルワークの機能を果たす社会福祉士~」公益社団法人 日本社会福祉士会 福祉人材確保専門委員会 第9回平成29年2月7日

 http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000150802.pdf

 

 

著者プロフィール:Health Communication Facilitator ®   吉田智美

愛知県名古屋市生まれ。中京大学体育学部健康教育学科卒、立教大学ビジネスデザイン研究科でMBAを取得。医療業界での営業、教育の仕事を経て、現在はフリーで活動。医療・健康に関連するあらゆるコミュニケーションの場における理解の促進や問題解決を助けることを仕事としている。ステークホルダー全員で共に考えていく仕組みや場づくりに情熱を注ぎ、中でも合意形成に興味があり、「ゆるやかな合意」について研究している。

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